HSPか発達障害かで悩んでいる方へ ~HSP以外のことが理由で起きる生きづらさとは~

自分が周りとは「なんとなく違う」と感じたことをきっかけに、いろいろと調べてHSPと出会い、腑におちた!と感じる方が増えてきていますね。
一方で、「この”違和感”って、発達障害なのかなあ・・・でも、病院にいくのは勇気がいるなあ・・・」と悩みつつ、当相談室にお越しになる方もいらっしゃいます。
もしあなたが、HSPか発達障害なのかで迷っていて、実生活でもなんらかの支障を感じていたら、HSPについてだけでなく、発達障害について調べるのも一つのヒントになると思います。
この記事では、HSP以外のことが理由で起きる悩みや、発達障害を理解するのに役立つ情報をお伝えします。
もくじ
「敏感すぎる」だけではHSPとは断言できません
ここ数年、日本では、「敏感すぎる」「繊細」といった表現とともにHSPが語られています。私も、「敏感すぎる」というフレーズを使って発信しているもののひとりですが、気を付けていることがあります。
それは、HSPは敏感すぎるだけではない、を明確に伝えること。
HSPか、そうではないかをみわけるには「HSPの4つの特徴」を知る
では、あらためて、HSPはどういうものなのでしょうか。
すでにご存知の方も多いとおもいますが、HSPは4つの特徴があり、この4つ全てに当てはまることがHSPとされています。
HSPの4つの特徴:
- 深い処理
- 神経の高ぶりやすさ
- 感情反応の強さ
- ささいなことやちょっとした変化・違いに気がつきやすい
HSPの4つの特徴の一部が当てはまる場合は、私は、「HSPではないが感受性がするどい」などと整理していて、お悩みへの対策は、ほとんどが、HSPの方向けのものと重なります。
私が気を付けているのは、4つの特徴以外の側面でも生きづらさをかかえている場合です。
HSPと発達障害は混同されることがある
- 音やにおいに敏感すぎて辛い。
- 自己肯定感が低く、人間関係が辛い。
こういった傾向はHSPにも見られますが、HSP以外のことが原因で悩んでいる可能性もあります。
「HSP以外のこと」にはいろいろありますが、たとえば発達障害とHSPが混同されている場合があります。
HSPとADHDの混同 ~ E.アーロン博士の見解 ~
アーロン博士によると、HSPとADHDは混同されやすいとのことです。
「静かな場所での作業を好むのであればHSP」とのことですが、私がお会いしたADHDの方の中には、音に敏感な方もいらっしゃいました。
ことばだけで気質や発達障害のことを伝えるって難しいな、と思います。
HSPもADHDも、こういう行動面がある、と絶対的にあてはめることは難しいんですね。
静けさといっても、基準は人それぞれあって、私が許容できる「静けさ」の範囲と、他の方が許容できる範囲は異なりますよね。
静けさだけでHSPかADHDかを明確に判断することはほぼ不可能です。
この点は、アーロン博士も、「何らかの障害や疾患かなと感じるなら、その方面の専門家に相談してください」ということを、ブログやサイト、書籍で書いていらっしゃいます。
すんなりとHSPと断言できない状況では、各種方面の専門家や他の発信者の方々の見解を頭にいれながら、たとえば音に関すること以外の側面もてらしあわせて、HSPらしさの有無を確認することにしています。
HSPと間違えられやすい職場での問題
HSPなのか、他のことが原因で悩みがあるのか、がすぐわかる場合もあれば、何度かお話を伺ってわかるときもあります。たとえば、「仕事の覚えが遅い」というフレーズでだけでHSPと判断しきれません。
具体的に説明した方が伝わりやすいので、仕事や働き方に関するご相談で取り上げられることのある、HSP以外の可能性がある例を、ご参考までにいくつかご紹介します。
なお、これらは一例にすぎません。ほかの例もありますし、解釈もケースバイケースです。そして、ここに書いた内容だけで病気や症状の診断が下ることは決してありません。
あくまでも、HSPと間違えられやすいケースをイメージしていただくための説明としてお読みください。
仕事の覚えが遅い
HSPは、新しい環境や、初めて取り組むことで成果がでるまでに時間がかかることがあります。
仕事の全貌、自分の作業の位置づけ、自分の作業が及ぼす影響、仕事の目的など、全体像も詳細もすべて腑におちるまではなかなか作業がはかどらない傾向があります。
その一方で、半年から1年ほどたつと、仕事もできるようになり、場合によっては優れた結果を出すこともあります。
どんなに説明されても、何年たっても作業ミスがある・指示が理解できないなど成果が見えてこない場合は、HSP以外の何かが原因である可能性があります。
マイペースで作業をしたい
マイペース、とは「自分なりのやり方と進める度合い」のこと。
HSPは、作業の進み具合を逐一チェックされる状態がとても苦手です。
チェックされている状況や、チェックを入れてくる人の思考や感情に引きずられてしまうのです。
加えて、予定よりも時間がかからないように、ミスがないように・・・と慎重になりすぎて、結局時間がかかったりすることがあります。
マイペースや時間の管理について、「気がついたら予定の時間を過ぎていた」「時間の決まりがあることが耐えがたい」という感覚がある場合は、HSPとは違う原因の可能性があります。
こだわりが強いと言われる
HSPは、慎重にことを運んだり、総合的な判断のもとに結論を出す、という感覚ゆえに、「こだわりがあるねえ~」と言われる場合があります。
ですが、時に、変更が起きることもあり得ると心得えています。
変更そのものが全く理解できなくて、パニック状態におちいるほど激しい場合は、HSP以外の可能性があります。
会話には問題がないが、漢字や算数が苦手
誰にでも得意・不得意はありますが、HSPの場合は、「やらなければならないことだ」と判断すると、ムリしてやり遂げようとします。
その結果、ある程度(またはとても)できるようになることが多いです。
どんなに努力を重ねても、漢字が覚えられない・計算ができない・数え間違えてしまうといった場合は、HSP以外のことが原因である可能性があります。
片付けが苦手
忙しくて時間に追われる現代人にとって、家事や片付けに時間がまわせない・・・とストレスに感じることは多いですよね。
時間がとれれば片付けができるのであれば、何とかして時間をやりくりすることが解決になります。
もし、時間があったとしても、片付ける気があったとしても、いつのまにか他のことをしてしまって片付かない場合は、HSP以外のことが関係している可能性があります。
周りが自分の陰口をたたく
HSPは、雰囲気を察しやすく、他の人の考えや気持ちをある程度(ですがかなり正確に・・・)感知してしまいます。
感知する内容は、喜怒哀楽すべて。
楽しんでいる人がそばにいると、まるで自分のことのように楽しい気持ちになり、ふさいでいる人がそばにいると、自分の心まで苦しくなってきてしまいます。
そして、自分のせいで周りが不愉快な思いをしているのではないか?と気になってしまうのです。
他人の気持ちや考えに同調しすぎてしまい、自分がわからなくなる、とか、自分の意見を言えずに困る、というのがHSPの悩みです。
もし、「周りがいつも私の陰口をたたく」というように、周囲から攻撃されていることを「周りの気持ちがわかりすぎる」と感じている場合は、HSP以外のことが原因である可能性があります。
指示や会話が理解できない
友達との会話で大きな問題はないのに(時々アレ?っという顔はされるが、大勢に影響はない)、仕事のハナシは何か月、何年たっても理解が追い付かない場合は、HSP以外のことが原因である可能性があります。
HSP・疾患・発達障害への対処
自己肯定感が低い、は、悩みを抱えるHSPの方からはよく伺います。自分のことを好きになれない理由がHSPなのか、他にあるのか、によって対処が異なります。
HSPが原因であれば、HSPの気質を理解した上で、人生の方向性と日々の過ごし方のバランスをとるトレーニングが効果を発します。
何らかの疾患がある場合は、治療が最優先です。治療の方針は、医師と相談する必要があります。
発達障害が関係する場合は、メンタル面だけケアしても、根本的な改善が見られるとは限らないと言われています。
発達障害からくる鬱や適応障害など(二次障害といいます)を改善するには、発達障害への自己理解を深めつつ、社会生活をおくるうえでのサポートが必要だからです。
また、働き方・仕事や職場の選び方や、受けられる支援も、HSPかそれ以外かで変わってきます。HSPには公的支援はありませんが、疾患・発達支援にはあります。
さまざまな生きづらさに対処するきっかけを
発達障害に関する最新情報や書籍は、少なくとも年に一度ほどのペースで新しいものが出てきていると感じます。
たとえば、2013年に、発達障害の診断基準が大きく改訂され、発達障害ではなく「神経発達症群」と呼称が変わり、アスペルガー症候群という診断名がなくなるなどの変更がありました。
いまは、変更に応じた医療や支援の現場でのノウハウが、徐々に発信されている状況と考えられます。
診断基準が変更になっても、情報やノウハウが悩んでいる人に届くまでに時間がかかります。
情報がより氾濫して、かえって混乱する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
HSPも発達障害も、基本的な定義はありますが、あらわれ方は人それぞれ。
そのため、本やネット上の情報を読んだだけではなかなか判別がつかず、具体的な状況をお伺いしてはじめて、HSPなのかそれ以外の可能性があるのか、がわかるご相談もあるのです。
セッションを通じて、毎月、ほぼ一定の割合で、実はHSPよりも発達障害、もしくは他の疾患が原因なのかな?と感じる生きづらさのある方にお会いします。
あらかじめご自身がわかってたが、疑念を抱えていらしたケース、セッションを重ねて初めてわかったケース、と状況はさまざま。
話が進むにつれ、HSPでは説明がつかない状況が影響していると見立てた際は、「これはHSPとは別の問題です」とお伝えしております。
当相談室では疾患や発達障害の可能性があるとわかっている方には、基本的にセッションをご遠慮いただくのですが、そもそも自分の悩みや苦しみがHSP以外のことなのかがわからない方もたくさんいらっしゃるわけです。
となると、お会いした際、いっしょに探ることになります。
発達障害が原因なのかは、私には判断できません。そのため、精神科や心療内科などの専門機関へのご相談を提案する場合もあります。
HSPでないことが生きづらさ・働きにくさにつながっていると知らされた方の反応は、ショックを受ける・安堵する・激怒する、など、いろいろです。
HSPではない側面がある、と伝えるのには、傷つけてしまうのでは・怒らせてしまうのでは。。。と非常に悩み、迷います。
しかし、HSPとしての対処が効果が期待できないなら、他のアプローチが必要である、と説明しなければなりません。
平静を装いつつも、私自身困惑した気持ちがないわけではありません。
むしろその逆なのですが、ご相談者さまがどんな反応をするかにとらわれすぎず、どこに向かえばいいか、をわかる範囲でお伝えしたいと考えています。
私のもとへご相談に来られる前に、なにかお役に立つ方法はないかと思い、この記事を書きました。
悩める方のお役に立てれば幸いです。