HSPが燃え尽き症候群を治せない理由と2つの対策ポイント
こんにちは。HSP専門キャリアコンサルタントの、みさきじゅり です。
いま読んでいるアーロン博士の最新刊(注1)に、自身がHSPである親が、燃え尽きる(バーンアウトになる)可能性はついてまわる、というくだりがあります。
仕事でも、同じことが言えると私は思いますし、オランダの研究(注2)では調査対象となったHSPの57%はバーンアウト経験者、という結果も報告されています。
「燃え尽き症候群」というキーワードで、このサイトにたどり着く方も一定数あります。
このように、HSPとバーンアウト(燃え尽き症候群)は関係があるのかな?と考えて、調べる方がいるのですね。
私の経験から申し上げますと、バーンアウトは、「やらなくちゃ」「やりたい」という意志が、体力やエネルギーとうまく連動しないまま、ムリを続けた後に陥ります。
この記事では、HSPなりの意志とエネルギーの使い方で知っていただきたい考え方を2つ、ご紹介しますね。
HSPの燃え尽きやすさは「電池がすぐ切れる」状態
HSPの方のご相談では、周りの人と同じようには、気力体力が持たない、だから周りについていけない、人よりも多く休みがほしい・・・というお話をお伺いします。
あなたも、起きた時は元気なのに、すぐに電池が切れてしまう感覚、ありませんか?
これが、HSPの燃え尽きやすさです。
HSPが燃え尽きやすい理由
HSPは脳の情報処理が激しいため、気疲れしたり、周囲の情報に圧倒されるといった特徴があります。
学校や職場、家庭内といったあらゆる団体行動の場で、周囲のペースに影響を受けやすいのです。
たとえば、試験や仕事の成果など、「見える結果」を、周りと同じ、もしくは、相手の期待値を察して、なんとか達成しよう、と努力しています。
なんとか達成しよう、とわかって行っている時もあれば、自然にそうしてしまう側面もあります。
周りに目がいきがちで、気がつくと、自分のキャパ以上に動いてしまうので、すぐに疲れる・燃え尽きてしまうのです。
HSPの「過剰な努力」
HSPが、自分の持つ気力・体力以上に、結果を出そうとしてしまうのには、いくつか理由があります。
イメージ通りにやろうとする
相手や周囲、置かれている環境で期待されている結果をイメージして、その通りにすることを優先します。
自分の気力体力で叶うかよりも、まず「やろうとしてしまう」のです。
よりよい結果が見えてしまう
もともと努力家なので、結果を出せてはいるのですが、ここで、持ち前の洞察力が作用します。
さらに良い結果を出すための改善ポイントが見えてしまうんですね!
そして、「改善ポイントが見えた(イメージできる)」ら、その通りにしようとしてしまうのです。
電池切れには充電を
HSPの人は、時に、自分が、過剰に努力をしていると気づかないことがあります。
疲れがたまってから、「やりすぎてるのかな?」と思うことはあっても、だから休もう、と切り替えられないで、しょっちゅう電池切れを起こします。
電池切れ、燃え尽き状態には、「充電をする」と決めましょう。
仕事や作業の場を離れて、ひとりになる。ダウンタイムを取る。
これはHSPには絶対必要なことです。
それができたら悩まないよ・・・
そうなんですよね。頭では「休まなくちゃ」とわかっているんですよね・・・。
だけど休めない、だから悩むんですよね。
では、なぜ休めないのでしょうか?そこには2つの焦りが存在します。
HSPが燃え尽きても抱える「2つの焦り」
2つの焦りとは、意志と充電への抵抗 です。
意志・・・疲れてるけど、やらなくちゃ、やりたいという強い思い(まじめさ、責任感の強さ)
充電への抵抗・・・「どうせ充電してもまたすぐ電池切れするんだよね?だったら充電する意味あるの?」という抵抗感
2つの焦りとのつきあい方
2つの焦りとつきあうには、2つの考え方をお勧めします。
- 自分のアウトプットのスタイルを知る
- 単価を上げる
1. 自分のアウトプットのスタイルを知る
HSPのエネルギー(気力体力)の変動は、HSPでない人のそれとは違う波を描きます。
エネルギーがあると、結果(アウトプット)を出せますよね。
HSPと”みんな”の結果の出し方には、違いがあるのです。
”みんな”は、右肩上がりの直線、HSPは、エネルギーが充電されている時に結果を出すので、波を描きます。
HSPは、結果を出せる日とそうでない日の落差に戸惑いますよね。
それは、エネルギーの充足度に関係している部分もあります(エネルギーが全てとは限りませんが、大きなウエイトを占めていると私は思っています)。
HSPは、自分の体調の波を知り、電池切れでできない時はできないと受け入れるのも大事です。
電池切れしたらできないものはできない、それは恥ずかしいし、悔しいですよね。
でも、あなたが能無しという意味ではない、と肝に銘じましょう。
エネルギーの使い方としては、エネルギーがあるときに、先回りして結果を出して、エネルギーがない時のための「貯金」にする、と考えるとよいでしょう。
例 期日よりもかなり前にプログラムを一気に書き上げて、ローカルファイルに保存。少しずつ共有アーカイブにアップする。
※エネルギーの波については、この本の7章 p.199~210に、HSPのペースや学習曲線のことを書いています。ぜひ読んでみてくださいね。
2. 自分の単価を上げる
エネルギーに波があり、結果の出し方に個性があるHSP。
意識してほしいのが「単価を上げること」です。
単価を上げることが大事なわけ
なぜ、単価を上げることが大事なの!?と疑問に思う方も多いはずなので、はじめに補足しておきますと、
単価を上げておくと、多少休みを増やしても、休んだ分の経済的ロスや、仕事面での評価ロスを取り返しやすくなるからです。
「自分は休んでも、ロスを取り返せる。だから安心して休もう」と心の底から自分に対して安心するために、普段から単価を上げる意識を大切にしましょう、という話です。
単価を上げる、とは
単価を上げるとは、「この人に頼むと、多少ペースにムラがあるけど、概ね言われた通り、またはそれ以上の結果を出すよね」と周囲に思ってもらう、ということです。
そう思ってもらった結果、時給や単価を少し高めにいただける自分になろう、と意識するとよいでしょう。
ものすごく高くする必要はありません。少し、でいいのです。
- 限られた時間内で周りと同じ結果を残す(みんなと同じやり方はしないけど、やることやれる人になる)
- 仕事や作業の合理性を図る
- 体力も集中力も出せる時は、人より高い成果を出す
- 他人以上の結果を常に出すことではない
ムラ気とか言われ傷つくこともあると思いますが、直線を描くタイプの人間と私たちとの力の使い方は違うのです。
単価を上げるというのは得意なスタイルでレバレッジをかけ、リターンを大きくするという意味です。
反対に、不得意なスタイルは人に任せる・頼る。自分のエネルギーは使わないことです。
例 料理をしたり人との会話が苦手だが、BBQに参加しないとならない
早めに会場に入り、BBQセットの設置を頑張る・率先してごみをまとめる仕組みをつくる
(片付けが始まったころ、少し手伝ってフェードアウトすれば、ダラダラと二次会・三次会に引きずられない!)
実はすでに単価が高い人ではありませんか?
そもそもHSPの多くは、完璧主義な視点を持つ傾向があり、自分に対しかなり厳しい基準を課しているものです。
ミスをするなんて言語道断、他の人よりもお役に立てる自分でいなくちゃ、など、HSPでない人からは想像できないほど高い理想を掲げていることが多いのです。
単価を上げる意識を持ちましょう、と書きましたが、誤解しないでください。
これ以上頑張れといいたいのではありません。
単価を上げておくメリットを理解してほしいだけです。
その上で、少し冷静に自分を振りかえってください。あなたは、頼まれたこと以上に頑張ろうとしていませんか?
もしそうなら、「すでに私は単価が高い人間だ。だから少し休んで充電しても大丈夫だ」と受け入れてほしいのです。
疲れ果てているHSPの方へ
私のもとにご相談に来るHSPの方は、周りが活動的で、切れ目なく、エネルギッシュに行動する人が多い環境にいて、仕事の内容はやりがいがあるけど、体調や人間関係がうまくいかないという方や、逆に、周りが動いてくれないので、自分がカバーしまくっている方が多いです。
トップが非HSPで活動的、高圧的なタイプ、事業が魅力的だがペースについていけないという状況もお聞きします。
そんな環境では、休みたくても休みたいなんて、言えないですよね。
行きたくないけど、なんとか体を引きずって出かけているなら、
思い切って休みを取ることも、ぜひ考えてみてくださいね。
休みをとったら、心身の状態を確認するために、精神科・心療内科を受診することも、必要な場合があります。
休むのも辞めるのも受診するのもいいけれど、その後どうしたらいいか?との悩みもお持ちかと思いますが、まず充電することです。
充電して、少し力が戻ったら、今後の方向性を整理する時間と場を持つことで、精神衛生上、プラスに働くと思います。
そのような時間と場を活用するために、充電してくださいね。
疲れ果てているけれど、休む決心がつかない方。休んだら迷惑をかける・休むなんて無責任だ、という思いに苦しんでいる方。
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引用・参照文献
注1: “For HS Parents, the burnout potential never goes away” : Elaine N. Aron PhD The Highly Sensitive Parent (2020) p.32
注2: HSP and burnout: international research :Esther Bergsma (2019)